有鉛はんだと無鉛はんだについて

 

 皆さんははんだ(半田)と聞くとどんなものを思い浮かべるでしょう。

 

 もし電子工作をする方でしたら有鉛の糸半田でしょうか。

 

 メーカで回路設計をしていて簡単な試作や改造ならやるよって方は

 Pbフリーの糸半田が多いのではと思います。

 

 基板実装工場で働かれてる方はPbフリーのクリーム半田なのかな?

 

 それぞれ普段使っている半田以外の半田についてはあまり気にしないと思いますので、今回は半田の種類について、鉛が入っているものと入っていないものの用途や使いやすさについてリワーク専門家の目線で書いていきたいと思います。

共晶半田とPbフリーはんだ

有鉛はんだとは

  今更かとは思いますが、

  有鉛はんだとは、鉛の入っているはんだです。

 特に一般的なものを共晶半田といって、スズが62%、鉛が38%。

 

 低融点(183℃)で濡れ性がよい等、非常に扱いやすいのが特徴です。

 

 ひと昔前まで、はんだといえばこの共晶半田が当たり前でした。

 

 ヨーロッパでのRoHS指令という環境対策の声明が出され、鉛の使用が制限されるようになってからはPb(鉛)フリー半田という代替品に置き換わりつつありますが、今もなおその信頼性の高さ、扱いやすさから一部の分野では共晶半田が使用され続けています。

共晶半田 クリームはんだ

無鉛はんだとは

  一方の無鉛はんだ、無(free)鉛(Pb)でPbフリー半田と呼ぶことが多いです。

 

 一般的なものはスズ96.5%、銀3%、銅0.5%。

 

 融点は217℃。

 濡れ性は登場した当初はかなり問題がありましたが、はんだメーカーさんの努力もあって、現在では改良され非常に良くなっています。

 

 共晶から置き換えるために開発されたもので、20年ほど前(RoHS指令に関連して)に開発、使用されるようになってきました。それなりに時間も経過しているため仕事ではんだを使用する方の中では無鉛はんだしか使ったことがないという人もいるかもしれませんね。

Pbフリーはんだ クリームはんだ

それぞれのメリット、デメリット

 

 Pbフリー半田は高い(高額)とか、共晶は鉛だから体に悪いとかそういった点は置いておいて、はんだごてでつける場合やリワークでの使用の場合の実用でのメリットデメリットを書いていきましょう。

 

共晶半田のデメリット、Pbフリーのメリット

  共晶半田はとにかく用途が限られます。

 

 今製造されている基板のほとんどが、鉛を含んではいけない制限がある中で作られているといっても過言ではありません。

 よくある家電、通信機器、設備の基板。ほぼすべて。

 共晶半田を使ってはいけないもので溢れています。

 

 一方、

 Pbフリーはんだの最大にして唯一のメリットは

 「どこに出しても問題ない」という点です。

 

 RoHSはヨーロッパでの基準ですが、製品を海外に輸出する場合などは基本的にこの基準を守って製品を作って出荷することになるでしょう。つまり海外向けはほぼPbフリーです。

 

 国内向けでは関係ないといえば関係ないですが、ほとんどの製品はRoHSに準拠して製品を作ったほうが「無難」である為かやはり殆どPbフリー。

 つまり製品を作る上で無鉛はんだで作って置けば問題ありません。

 

 

 

共晶半田のメリット、Pbフリーのデメリット

  共晶半田のメリット一つ目はPbフリーはんだよりも低い温度で溶ける為、はんだ付けがしやすいところです。

 融点の違いは30度程度。なんだそんな程度と思われるかもしれませんが、はんだごてを基板に当てるとその温度は周辺に銅線のパターンを通じてどんどん逃げていきます。

 ましてや今の基板は多層高密度。熱が逃げるところはどこにでもあります。特にGNDパッドはどこまでも熱が逃げて全く温まらずこてを延々と当て続けて、、、なんてことになりかねません。

 30度低いことのメリットは計り知れません。

 

 更にもう一つ。

 濡れ性の良さ。

 濡れ性とは何ぞやと言われると難しいのですが、「スルッと付く」感?

 難しい、、、

 はんだごてを当てて、すっとこてを引くとスルッと綺麗になる。

 これはなかなかいいものです。

 

 

 逆にPbフリーはんだのデメリットは共晶のメリットの真逆。

 融点が高いため高温にしないと溶けません。217度のはんだを溶かす為には概ね240度程度に温めないと安定して均一にはんだが溶けてこないのでなかなか高温です。

 部品の取り外しやBGA等のICへの作業ではリワーク機を使うことになりますが、リワーク機では周辺もまとめて加熱する必要があります。240度に温めると耐熱性の低い部品なんかは融ける危険がでてきます。

 大問題ですね。(それでも出来るだけなんとかするのが我々プロなんですが)

 

 そしてPbフリーの濡れ性。

 はんだごてで共晶とPbフリーを両方使ったことのある人は全員感じていると思います。

 スルッと付かない!

 今一般的に使われているPbフリーはんだの濡れ性は非常に良いです。

 非常に良いのですが、それよりもはるかに良いものを知っている以上ベストとは言えません。

 

 

 簡単にまとめるとこんな感じ

はんだの種類 用途 はんだ付け品質
共晶半田

非常に限られる

高品質に

しやすい

Pbフリーはんだ

何に使っても

問題なし

高品質に仕上げる

のは難しい 

共晶を使うべき基板とは

 上の表にあるように共晶半田の用途は限られていますが、

 その限られた用途の中では最大限に活用すべきです。

 

 ではどういった場面で効果的なのでしょうか。

 

試作基板の実装

 開発した基板の最初の試作は小ロットで作成すると思います。その小ロットの実装をもし手付けのはんだごてで実装していくなら、それは共晶半田で実装するべきです。

 

 試作品が、市場に出さないもの=Pbフリーでなくてもよいものであれば、手付けでも高品質を確保しやすい共晶半田がオススメです。

 

 工房やまだでは手半田での部品実装も行っておりますが、共晶半田仕様の基板実装の場合にはお値引きをしております。

 やはり濡れ性がよいと、はんだ付けがうまく行きやすく手間を減らせて低価格に出来るのです。

試作基板の改造

 試作基板の実装は、先々量産をしていく時を見込んでそれと同様にPbフリー仕様でマシン実装するということも多いと思います。ただ、その試作品に改造が必要になった場合には積極的に共晶を利用していきましょう。

 

 改造は特別なスキルを求められる高難易度技術です。

 難しい作業にわざわざ難しいはんだを使わず、できるだけやり易い方法で行うのがよいと思います。

 

 

BGAジャンパ配線

 特に共晶半田の使用をお勧めしているのが改造の中でも難易度の高い、BGAジャンパ配線です。

 工房やまだの非常に得意とする改造ですね!

 

 この改造はBGAを基板の間からジャンパ線を引き出して、回路を補ったり変更したりするものです。

 はんだ不良等により実装不良の起きやすいBGAと基板との間にジャンパ線という異物を挟み込むわけなので、はんだの馴染み不良による異常が起きやすため、共晶半田での濡れ性アップの効果が大きいというわけです。

 

 ご依頼いただいた場合にはお話を伺って、可能であれば共晶を使わせていただいています。

BGAジャンパ配線改造

 

 有鉛はんだは最近では極々限られた場面でしか使用されていないので、わざわざ使うという選択肢自体が無いという人も多いと思います。

 

 工房やまだではお客様のご要望をできる限り高品質で叶えるために、様々なご対応、ご提案をしてまいります!

 

 経験がものをいう基板改造!

 

 是非、プリント基板の駆け込み寺 工房やまだまで!

 

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